このニュースは外交や観光などに関連し、国家でも地方でも業務に関わる内容なので要チェックです。
時事問題の勉強をスタートした方の悩みの一つに、「過去の流れを知らないからニュースを読んでもわからない」というのがあります。
この記事では、これまでの経緯から解説しているので、まさに今時事問題を勉強しはじめた方にもわかりやすいです。
また、ここ最近のできごとも、過去のできごとがあったからこそ起きたこと。
日本史や世界史の知識も必要になります。教養試験の人文科学も同時に学びましょう!
概要
8月10日、中国政府は日本や米欧、韓国など、世界78カ国・地域への団体旅行を新たに解禁した。中国外務省はその理由について、「国際航空便の回復が続き、国民の海外旅行への意欲が高まっているため」と説明した。
これまでの経緯
新型コロナウイルスの影響で、中国政府は2020年1月に国内の旅行会社に対し、団体旅行を禁止するように命じました。
禁止したのは団体旅行の他、航空機とホテル宿泊をセットにしたパック旅行商品です。
なお、個人が個別に予約する場合は規制の対象外でした。
しかし、今年2月から段階的に海外への団体旅行の解禁を進めてきました。
このときに解禁されたのは、タイ、ロシア、スリランカ、フィリピンなど20カ国です。
日本やアメリカ、韓国などは含まれていませんでした。
中国政府は解禁の基準は明らかにしていませんが、中国からの入国者に対する水際対策の有無が考慮されたのではないかと考えられています。
3月に、中国政府は解禁リストにさらに40カ国を追加しました。
日本はその直前に中国からの入国者に対する水際対策を緩和していましたが、
このときも日本は解禁の対象から外れました。
そして今回、日本は2020年1月の渡航禁止から3年半ぶりに解禁されました。
日本への影響
団体旅行の再開により、2023年の訪日中国人は予想よりおよそ200万人上振れすると見込まれています。
日本にはこのような影響があると考えられます。
1. 経済の押し上げ効果
今年4月〜6月は、中国人の旅行支出はイギリスに次ぐ第2位で、訪日客1人あたりでは約34万円でした。台湾や韓国など他のアジア諸国と比べても高い水準です。
なお、これは団体旅行が解禁する前なので個人旅行客の旅行支出額です。
今後は団体客も観光に訪れることでさらに訪日客の消費額の増加が見込まれています。
2. 旅行・観光部門の人手不足
2023年の日本の旅行・観光部門の雇用者数は560万人との予測があります。
コロナ禍以前の2019年に比べるとおよそ30万人減少しています。コロナ禍で旅行業界は前代未聞の落ち込みを経験し、退職や転職を余儀なくされたからです。
中国からの観光客が回復が見込まれ、旅行業界の人手不足が懸念されています。
3. 宿泊料金の上昇
全客室の売上高を、稼働した客室数で割った値を平均客室単価といいます。
いわばホテル1部屋あたりの宿泊料金ですね。
今年6月の平均客室単価は約1万6500円で、この時点ですでにコロナ禍よりも2割ほど高い水準となっていました。
解禁後はさらに料金の高騰が進むのではと考えられます。
日本が行う対策
人手不足や宿泊料金の上昇など心配される影響はありますが、訪日観光客が増えるのはやはり喜ばしいことです。
日本国内の様々な業種で、解禁を見据えた対策をとっています。
対策といえば、公務員試験の論文でも「あなたが考える対策」を要求されますね。
たくさんの事例を知ることで、面接官を納得させられるような対策を考えることができます。
1. マツキヨココカラ&カンパニーの「免税対応店増加計画」
日本の安くて質の良いコスメや医薬品が購入できるため、ドラッグストアは外国人観光客からとても人気があり、もはや観光地化していますね。
そんなドラッグストアで、特に観光客の多い地域では、店先に「TAX FREE(=免税)」と書かれた店舗を見たことはありませんか?
商品を買ったときの関税や消費税が免除される店舗です。
「外国人旅行者が買う = 日本国内では消費されない」という理由でこのような対応をしてくれるので、免税となるのは外国人旅行者に限られます。
ドラッグストアを運営するマツキヨココカラ&カンパニーは、この免税対応店をコロナ禍前よりも5割増やし、約1500店舗となりました。
また、中国語で接客できる従業員を増やしたり、他のアジア圏に展開している自社の店舗の売れ筋を分析して品揃えを工夫したりしています。
2. 京王プラザホテルの「自動チェックイン」
東京都庁の目の前にある高層ホテル、京王プラザホテルでは、従業員数はコロナ禍前と比べて15%ほど減少しました。
人手不足が予想される中、8月から自動チェックイン機を導入しました。
フロント業務にあたる従業員を確保する必要がなくなりますね。
中国の海外旅行者数について、歴史とともに振り返る
コロナ禍前の2019年には、中国から海外旅行に出かける人は延べ人数で1億5000万人に上りました。
なお、延べ人数とは、1人が5回海外旅行に行ったとしたら5人と数え、1人が10回海外旅行に行ったとしたら10人と数える、というようなカウント方法です。
でも、中国では海外旅行が厳しく制限されていた時代がありました。
ここで教養試験の人文科学のお話です。
第二次世界大戦後の1949年に、毛沢東(もうたくとう)という人が中華人民共和国を建国しました。
彼は、格差がない、みんなが平等な「社会主義の国」を目指したり、中国を発展させるための「大躍進政策」を推し進めたりしていました。
また、中国国民が海外旅行へ行くのは厳格に管理していたため、今ほど自由に海外に旅行に行くことはできません。
しかし、毛沢東の政策は失敗してしまい、「みんな平等に」貧しくなってしまいました。
その後、1978年には鄧小平(とうしょうへい)という人が中国の政治のリーダーとなりました。
彼は、「改革開放」を唱え、海外の企業を中国に呼んでたくさんの工場を作り、中国で生産した商品をどんどん輸出していきました。
中国が世界第2位の経済大国に上り詰めたのは、鄧小平のおかげだといわれています。
また彼は、海外旅行も自由に行えるようにしました。
その後、2010年代には、中国はさらに高い経済成長率を続け、中国人の所得はどんどん上がっていきました。
所得が増えれば、旅行などの娯楽にお金を使う余裕ができます。
この頃から、日本でも「爆買い」という言葉が聞かれるようになりましたね。日本に旅行に来た中国人などが、日本で家電や日用品などを大量に買っていきました。
新型コロナウイルスが世界に広がる直前の2019年まで、中国の海外旅行者数は増加し続けました。
最後に
今どきニュースで時事問題だけではなく、世界史や日本史、論文に役立つお話をしました。
公務員試験は無駄に範囲が広いと思われがちですが、いろいろなことに興味を持って学ぶことができる人材を求めているからこその試験なのです。
科目を1つ1つ丸暗記していく勉強法では、この試験は振るい落とされてしまいますし、
何より勉強が苦痛でしかありません。
このように一つのことに関連させて勉強していけば、楽しみながら試験に突破する力をつけていくことができます。
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