そごう・西武労働組合がストライキ!労働運動や労働組合の歴史とともに。

時事問題

概要

8月30日、セブン&アイホールディングスは、子会社のそごう・西武をアメリカの企業に売却することを決定しました。これに反対するそごう・西武の労働組合はストライキをすることに決め、それに伴い31日は百貨店の西武池袋本店が臨時休業となりました。

今までの経緯

世界ではイラク戦争がニュースになり、日本では映画「世界の中心で愛をさけぶ」が大ヒットしていた2003年、百貨店を運営する2つの企業「そごう」と「西武」が統合して「ミレニアム・リテイリング」となりました。

2006年、知る人ぞ知るコンビニ「セブンイレブン」を運営する「セブン&アイ・ホールディングス」がミレニアムリテイリングを子会社化しました。
その後、ミレニアムリテイリングは現在の会社名である「そごう・西武」に名前が変わりました。

亜子先生
亜子先生

子会社化とは、簡単にいうと「ある会社の親として、経営権を握ること」です。
新しい事業をしたいとき、新しく会社を作るのは大変ですが、すでにその事業をしている会社を子会社にすれば、少ない労力で新たな事業を運営できます。

しかし、そごう・西武が運営する百貨店の経営が厳しかったこと、コンビニの経営に力を入れるということで、
2022年にセブンはそごう・西武をアメリカの企業「フォートレス・インベストメント・グループ」に売却することに決めました。

それに反対したのがそごう・西武の社員さんたちです。
売却の時期を2度も延期する事態になり、9月1日にやっと売却されることになりました。

そもそもなぜそごう・西武の社員さんたちは米企業への売却に反対しているのか。
「自分たちがリストラされてクビになってしまうのではないいか」との不安があるからです。

売却先のフォートレスは、家電量販店のヨドバシホールディングスとビジネスパートナーの関係にあります。
そごう・西武の百貨店にヨドバシカメラが出店したら、売り場面積が減って働く場所がなくなるのではないか?と懸念しています。

後ほど解説しますが、企業で働く社員の多くが「労働組合」に加盟しており、組合員は自分たちが働きやすくなるようにいろんな行動を起こすことができます。
そごう・西武の労働組合は、「現在の社員全員の雇用を維持してほしい。さもなければストライキを実施する」と働きかけていて、今回ストライキによって西武池袋本店が臨時休業となったのです。

ストライキとは、労働者のために法律で認められた手段

ストライキとは、「労働者(会社で働く社員さん)が集団で会社に圧力をかけ、要求を実現させようとする行為」のことです。
例えば、自分の会社が、毎日残業が多いうえ、残業代も払えてもらえないところだとします。
これでは、労働者の権利が守られていません。
そこで、労働者は「無駄な残業を強いるな!」、「残業代はきっちり払え!」と会社に要求し、それでも会社が動いてくれない場合には、労働者みんなで会社を休み、労務の提供を拒否することができます。
社員さんが全員会社を休めば、会社側はとても困ってしまうので、社員さんの要求を聞かざるをえなくなります。
これがストライキです。

ストライキは労働者に認められた正当な手段なので、
会社やお客さんに迷惑がかかるとしても違法にはなりません。

ただし、不満を持つ一部の労働者だけで話し合ってこのような行動を起こすことはできません。
正当なストライキと認めてもらうには、労働組合という組織を通して、しっかり決められた手順に沿って行う必要があります。

ストライキを実施すれば、社員さんたちが自分たちの要求を主張することができる一方、
店舗を休業にしなければならなくなります。
労働者を守る正当な手段とはいえ、お客さんからの評判を下げるかもしれないというリスクもあるのです。

労働問題の歴史

イギリスで始まった労働者の団結運動

日本が江戸時代の真っ只中だった1760年ごろ、イギリスで産業革命が始まり、大きな工場で機械を使ってモノが大量生産されるようになりました。
例えば、イギリスの特産物である綿の布。今までは職人さんたちの手作業で作られていたのに、機械を使えば少ない人数で大量の布を生産することができます。

すると当然、職人さんたちは解雇されたり給料を減らされたりします。

そして産業革命後の1800年ごろ、職人さんたちは「待遇が悪くなったのは機械のせいだ」といって夜な夜な工場を襲って機械打ち壊し運動を行いました。
これをラッダイト運動といいます。

それを受けて、イギリスではこのような労働者の団結が合法化されました。
この団結が労働運動の始まりです。

日本の労働運動の歴史

日本でも明治時代に労働者の団体が結成されましたが、戦争に突入すると労働運動は禁止されました。
しかし、第二次世界大戦後には再び労働運動が本格化します。

1947年までに労働三法が制定され、労働者を守るしくみが整備されました。

労働三法
  1. 労働組合法 労働者の権利を保障する法律
  2. 労働関係調整法 ストライキなどの具体的な争議行為を認める法律
  3. 労働基準法 労働条件の最低基準を定めた法律

それぞれどんな法律かを簡単に見てみましょう。

1. 労働組合法

「労働三権」を保障するために制定された法律です。
労働三法、労働三権、と紛らわしいですが、
労働三法は労働者を守るための3つの法律、労働三権は労働者が持っている3つの権利、と覚えましょう。

労働三権
  1. 団結権 労働者が団結する権利
  2. 団体交渉権 団結して会社と交渉する権利
  3. 団体行動権 交渉がまとまらなかった場合に、ストライキなどの行動を起こす権利

この労働組合法が制定されると、企業は専用の労働組合を結成しました。
今回ストライキを実行したそごう・西武も労働組合があったのですね。
ストライキは団体行動権の一つです。

この労働三権は、全ての企業の労働者に認められていますが、公務員には制限があります。
全ての公務員には三権のうち団体行動権がありません。
行政を行う公務員が仕事をしなかったら、住民の生活が機能しなくなるからです。
さらに、警察官・消防官・自衛官には労働三権全て認められていません。
彼らが仕事をしなかったら、住民の命に関わってくるからです。

ちなみに、各企業の労働組合を代表するのが「日本労働組合総連合会(略して連合と呼ばれます)」です。
難しい言葉で「連合は労働組合のナショナル・センターである」と表現します。


2. 労働関係調整法

団体行動権で規定された、ストライキなどの行動を「争議行為」といいます。
労働関係調整法は争議行為について定めた法律です。

正当な争議行為は、みんなで仕事を休む「ストライキ」のほか、わざとダラダラ仕事をして会社を困らせる「サボタージュ」(「サボる」という言葉はここからきています)などが認められています。
これらは労働者の権利ですが、逆に会社側には事業所を閉めて労働者を焦らせる「ロックアウト」が認められています。


3. 労働基準法

労働時間などの労働条件の最低基準や、国籍などによる差別を禁止する均等待遇を定めた法律です。
これは目標ではなく最低基準なので、会社は労働者に対してこの法律以上の待遇を与えなければなりません。

労働時間については、1日8時間、週40時間と定められており、それを上回る場合は会社と労働者の間で「三六協定(さぶろくきょうてい)」を結び、残業代を支払うことが定められています。

また、賃金については、「通貨で、全額、月一回以上払う」ということが定められていますが、
最低賃金については別の法律に規定があります。

最後に

今回のストライキは、百貨店業界としては60年ぶりということで、歴史的な出来事ともいえるのではないでしょうか。
このニュースとともに社会科学や時事の労働問題の分野で問われる労働運動についてもご紹介しました。
今後も、一つのニュースで他の科目も学べる、一石二鳥の記事をアップしていきます!

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